Interview: Ryukishi07 Explains How Higurashi GOU and SOTSU Reinvent the Franchise
インタビュー:竜騎士07、語る- 『業・卒』は、新しい『ひぐらし』をいかにして生み出すのか
『ひぐらしのなく頃に 業』アニメシリーズが、リメイクではなく、『ひぐらし』の世界を舞台にした全く新しい物語であることが明らかになった時、ちょっとした騒ぎになりました。 その続編アニメである『ひぐらしのなく頃に 卒』も、終わりが近づき、今回のアニメにより、『ひぐらし』シリーズがどのように編み直されるのか―竜騎士07先生がアニメニュースネットワークに語ってくれました。
──『業・卒』にて、ついに新たな物語が雛見沢を舞台に繰り広げられます。
竜騎士先生の中で「昭和58年6月という舞台に立ち戻って、ストーリーを展開する」という考えに至った理由はなんでしょうか?また『ひぐらし』シリーズのどんなところが、竜騎士先生にとって「制作していて面白い部分」でしょうか?
竜騎士07:再び、昭和58年6月の物語を描こうと思った一番の理由は、ファンの方からいただいたたくさんのメールにあった、ある一言でした。
“もう一度、あの衝撃を受ける為、記憶を消して、また最初から読み返したいです”
作品発表から約20年になりますが、そんな意見を本当にたくさんのファンの方から、ずっといただいていました。
ですので、いつかご恩返しの機会があったら、ぜひ叶えてあげたいと長年思っていたのです。
そして、今回のアニメ化の機会に際し、これまでのひぐらしのルールとは、まったく異なる「新ひぐらし」を作り、それを実現しようと考えたのです。
そしてそれは、私にとってとてもとても楽しいことでした。
なぜなら、私にとって、作品を通じて、読み手の皆さんを驚かしたり、意表を突いたりするのが何よりも楽しいことだからです。
リメイクアニメだと思わせて、実は新作アニメだったと驚かせてみたり。
上辺はかつての物語と酷似していながら、その裏側はこれまでとはまったく違ってみたり。
ファンの方々に、文字通り“記憶を消して、再び『ひぐらし』を体験する”気持ちを楽しんでもらえたのではないかと思っています。
──『業・卒』では、梨花と沙都子の視点を軸に物語が進行します。梨花は、『ひぐらし』シリーズにおいて、非常に重要な役割を持つキャラクターであるのに対し、沙都子には『業・卒』で初めてスポットライトがあたります。今回、沙都子にフォーカスをあてようと思ったきっかけは何ですか?
竜騎士07:これまでの『ひぐらし』で、キャラクターたちのほとんどにスポットライトを当てて来たつもりでいたのですが、沙都子がメインとなる「祟殺し編」において、沙都子本人にあまり出番がなく、沙都子をもう少し描きたかったという気持ちがずっとありました。
その為、機会があったら、沙都子を中心に新しい物語を作りたいという思いが、ようやく叶えられたのが、今回の「業・卒」のアニメなのでした。
──『業』の物語では「部活メンバーが『理想の結末』を迎えたにもかかわらず、沙都子に新たな葛藤が生まれ、『惨劇の黒幕』に変わっていく」という流れがありました。沙都子が『業・卒』の物語を歩んでいくにあたり、「昭和58年以前の沙都子の人生や考え方」が影響を及ぼした部分はあるでしょうか?
竜騎士07:沙都子と梨花は、二人とも肉親を失っているという同じ境遇があり、仲睦まじくもありながらも、共依存の関係でもありました。
思春期を迎える二人の少女にとって、素敵な関係でありながらも、相手を愛するあまり、互いの人生を束縛し合う関係にもなっていました。
ただし、『ひぐらし』は団結の物語なので、その関係の陰の部分にはスポットライトを当てることはしませんでした。
今回の「業・卒」の物語では、核に、二人を巡る愛憎を据えることで、新しい世界を生み出すことが出来ました。
その意味では、昭和58年以前から、沙都子と梨花には、訪れることが約束されていた“試練”だと言えるかもしれません。
──『業・卒』の物語では「沙都子と梨花の確執」が物語の軸になるかと思います。その際「郷壊し編」内の「聖ルチーア時代」の二人について、「梨花自身が考える梨花の高校生生活」と「沙都子が考える梨花の高校生生活」のズレ、対比が二人の確執に大きくかかわっているかと思います。この二人のズレを描写する上で、竜騎士先生はどのような点を意識されましたか?
竜騎士07:互いが互いに、想いは完全に通じ合っている、と信じあっている“傲慢”を意識しました。
梨花はルチーア学園に、百年閉じ込められてた村とは違う、新鮮な欧風の魅力を感じていました。
そして梨花は、ずっと雛見沢で過ごしてきた沙都子にとっても、それは新鮮で魅力的に感じているに違いないと、確信していました。
自分は世界で誰よりも、沙都子のことを理解していると“傲慢”にも、信じていたからです。
一方で沙都子は、自分と一緒に過ごす雛見沢の生活が梨花にとっては最上であり、ルチーア学園に憧れるのは、一時の気の迷いに違いないと、確信していました。
自分は世界で誰よりも、梨花のことを理解していると“傲慢”にも、信じていたからです。
ルチーア学園で過ごす梨花は、この空気を、きっと沙都子も楽しんでくれていると、一方的に信じていました。
そして沙都子は、自分がまったくこの学園に馴染めないことを梨花は“気付いてくれている”はずなのに、見捨てて助けてくれないと、一方的に信じていました。
相手が特別な存在だと互いに妄信し合うからこそ、誰よりも憎しみが募ってしまう。
そんな、健全とは言えない関係が生み出す、ある種の悲劇を『ひぐらし』的に、惨劇であり喜劇でもあるように描いたつもりです。
──『業・卒』での沙都子は、「繰り返す者」の力の影響か、梨花への思いをゆがんだ形で叶えようとしているようにも見えます。竜騎士先生は「作中で罪を犯してしまったキャラクターの救い、贖罪について、どのようにお考えでしょうか?また(「ひぐらし」シリーズのみならず)物語において「このキャラクターはもはや救いようがない」という状況は、発生しうるものでしょうか?
竜騎士07:『ひぐらし』のテーマの中のひとつに、“許されない罪はない”というものがあります。
なので、この物語の中では、どのようなキャラクターであっても、罪であっても、許される道や、許される世界を示すのが、大切なことであると考えています。
よって、『ひぐらし』の世界では、絶対に許されないキャラクターというものは、存在しないと考えています。
ただ、現実の世界ではもちろん、許される罪と許されない罪が存在するのは事実です。
なので、『ひぐらし』以外の作品世界では、許されない罪を描くことはありえると思います。
ただ、どこまでが許される罪で、どこからが許されない罪なのか。
許すこと、許されることは、義務なのか、権利なのか。善意なのか、同調圧力に左右されるものなのか。
……とても難しいテーマですね。
これをメインテーマとして新たな物語を描けるだけの深みがあるかもしれません。
──『『原作/平成ひぐらし』での『祟殺し編』『皆殺し編』では「沙都子を鉄平の虐待から救おう」とする圭一や雛見沢のメンバーに焦点が当てられていました。作中で児童相談所が北条家に介入するまでに、いわゆる官僚主義的な描写もあり、とてもリアルな描写だと感じました。竜騎士先生は、以前インタビューで公務員経験がおありとお話されていました。こうしたリアルな描写や児童たちが直面する問題を描くにあたり、前職でのご経験が生かされているのでしょうか?
竜騎士07:かつて東京都内で10年ほど、お役所に公務員として勤めていたことがありました。
何度かの異動の中で、様々な部署を経験し、様々な住民問題に触れることが出来ました。
その時の貴重な経験を、『ひぐらし』では特に取り入れています。
公務員としての経験がなければ、『ひぐらし』は決して描けなかったと思っています。
──『ひぐらし』シリーズの魅力のひとつに、「”東京”の陰謀」「羽入のような超自然的な存在」「雛見沢症候群の生物兵器的利用」など、ジャンルを超えた多様な背景が複雑に絡み合っているという点があるかと思います。
竜騎士先生が『業・卒』の物語で、「これまでの『ひぐらし』シリーズにない、新たな要素」と考える要素はありますか?
竜騎士07:もちろんあります。
すでに前述していますが、これまでの『ひぐらし』で得た知識が通用しないという“謎”によって、再び、ゼロから『ひぐらし』を体験しているような気持ちを楽しんでいただきたかったので、そのような要素を混ぜ込んであります。
上辺はこれまでの『ひぐらし』にそっくりなのに、まったく異なる真相という、奇怪で挑戦的な「業・卒」を、どうかお楽しみいただければ幸いです。
──『卒』では沙都子が「魔女」と呼ばれていました。「魔女」という言葉には多様な含意があるかと思いますが、竜騎士先生が考える、「キャラクターを「魔女」たらしめる要素」とは何でしょうか?また、竜騎士先生は、作中の「魔女」が物語や他のキャラクターに与える影響にはどんなものがあるとお考えでしょうか?
その影響は「ポジティブ」なものでしょうか?「ネガティブ」なものでしょうか?
竜騎士07:作品毎に「魔女」の意味合いは異なりますが、ほとんどの場合、個人の立場でなく、神のように、世界や状況を俯瞰で見ることが出来る立場を持つ人物を指していると思います。
私は物語を描くことを、大きなゲーム盤の上に駒を配置し、それらがそれぞれに動き、ぶつかって起こす物語をそのまま書き記していると考えています。
すると、駒の意見でなく、駒を動かし、ゲーム盤とゲームの状況を俯瞰している“プレイヤー”の意見や感情が欲しくなる時があります。
そのような立場の人物に、「魔女」という名を与えているような気がしています。
同時に、プレイヤーの手が駒を動かすように、魔女もキャラクターたちを、物語が不思議なものになるように動かしてくれていると思っています。
つまりは、魔女とは竜騎士07の世界のトリックスターなのかもしれません。
あるいはカレイドスコープかも。
ランダムに現れる美しい模様のひとつひとつに善悪の区別はなく、ポジティブもネガティブもありません。
ただ、美しく動く模様を見たい魔女の手によって、クルクルと回されているだけ。
つまりは魔女たちの与える影響というのは、まさに「神の気紛れ」なのかもしれませんね。
今後も、興味深いテーマを見付けたら、それを魔女の視点で俯瞰して、新しい物語の「種」にしていきたいなと思っています。
注)オリジナル記事:『Interview: Ryukishi07 Explains How Higurashi GOU and SOTSU Reinvent the Franchise』
(掲載元:Anime News Network
本インタビューの質問事項は、Lynzee Loveridgeが作成した質問事項を、KADOKAWAの監修の下、日本語訳したものです。元記事における回答部分は、竜騎士07先生にお答えいただいた日本語の回答をKim Morrissyが英訳したものです。

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